⚠ 最重要:
うさぎは12時間以上食べない=緊急です。
便が出ない/ぐったり/歯ぎしりがある場合はすぐ受診してください。

Abstract(要約)

家兎の食欲不振(anorexia)は単なる「気分」ではなく、疼痛、消化管運動低下(GI stasis)、歯科疾患、感染症、代謝疾患などを背景に出現する重要な臨床徴候である。
本稿では、病態生理、鑑別、診断アプローチ、治療原則、予後因子、予防戦略を体系的に整理する。


最初に:緊急度のセルフチェック

症状 目安
12時間以上食べない 緊急受診
便が出ない/極端に少ない 緊急受診
ぐったり、歯ぎしり、呼吸が荒い 緊急受診
少し食べるが牧草を食べない 歯科疾患の評価推奨

「今すぐやること」だけ先に見たい場合
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なぜ「食べない」が危険なのか(病態生理)

うさぎの消化管は連続的な摂食と高繊維を前提に機能しています。
摂食量が落ちると腸管運動が低下し、内容物停滞とガス貯留が進行します。
腸管拡張は内臓痛を惹起し、疼痛ストレスは交感神経を介して腸運動をさらに抑制します。
結果として、摂食低下が自己増悪する「悪循環」に入ります。

図解:悪循環モデル(GI stasisへ)

摂食低下
腸運動低下
ガス/停滞
疼痛
さらに摂食低下

原因の医学的分類(Etiology)

① 消化管うっ滞(GI stasis)

  • 牧草摂取不足、急な食事変更、ストレス、脱水、疼痛がトリガーになりやすい
  • 便の減少(小さい/乾く/出ない)が重要サイン

② 歯科疾患(不正咬合・臼歯スパー)

  • 「牧草は食べないがペレットは少し食べる」→歯の可能性が高い
  • よだれ、口元の濡れ、食べ方が遅い、体重減少

③ 疼痛(泌尿器・運動器・生殖器など)

  • 膀胱炎、尿石、関節痛などの疼痛が食欲不振の原因になる

④ 全身疾患(感染・腎肝疾患など)

  • 感染症、腎機能低下、肝疾患などで全身状態が落ち、摂食が低下

診断アプローチ(臨床プロトコル)

一次評価(Triage)

  • 絶食時間、便量、飲水量、行動変化を「時間」で記録
  • 体温(可能なら)、脱水、疼痛サイン(歯ぎしり・丸まる姿勢)

検査(病院で行われること)

  • 腹部触診、聴診(腸蠕動音)
  • 腹部X線:ガス像・閉塞評価
  • 歯科検査(必要に応じ鎮静下)
  • 血液検査:脱水、電解質、肝腎機能など

治療の原則(Treatment Principles)

治療の柱:①鎮痛 ②補液 ③栄養サポート(閉塞除外後) ④原因治療

① 鎮痛(最優先)

疼痛は腸運動を抑制し悪循環を固定化します。鎮痛は「腸を動かす治療」の一部です。

② 補液

脱水は腸内容を乾燥させ停滞を悪化させます。重症度に応じて皮下/静脈で補液が行われます。

③ 栄養サポート(閉塞除外後)

閉塞の可能性が低い場合、繊維ベースのサポート食などで腸管に内容を供給し、機能回復を支えます。

④ 原因治療

歯科処置、感染・炎症への対応、疼痛源の治療、環境ストレス調整などを並行します。


飼い主が“安全に”できること(受診までの間)

  • 室温を安定(目安18〜24℃)
  • 静かな環境にする(抱っこ・追いかけを避ける)
  • 牧草を複数提示(香り・種類を変える)
  • 飲水確保(給水器+皿の併用)
  • 便の量・形・回数を記録(写真OK)
注意:
自己判断の薬投与や無理な強制給餌は、状態(閉塞など)によって危険な場合があります。
「便が出ない」「ぐったり」がある場合は受診を優先してください。

予防(再発防止の実務)

  • 牧草中心の食餌設計(常時アクセス)
  • 体重モニタリング(週1回)
  • 歯科チェック(牧草摂取量低下はサイン)
  • 温度・騒音・生活リズムの安定化

References(代表的標準文献)

  • Harcourt-Brown F. Textbook of Rabbit Medicine.
  • Quesenberry KE, Carpenter JW. Ferrets, Rabbits, and Rodents: Clinical Medicine and Surgery.
  • Meredith A, Flecknell P. BSAVA Manual of Rabbit Medicine.

※本記事は一般的な獣医学情報の整理です。症状がある場合は、うさぎを診られる動物病院での診察を優先してください。